東京都にむかしから伝わるご当地妖怪を日本地図とイラストで一覧表にして紹介します。
置行堀(おいてけぼり)、髪切り(かみきり)、篠崎狐(しのざきぎつね)…。あなたの知っている妖怪もいるかもしれません。妖怪といっしょに都道府県の特徴や自慢などを紹介しているので、ぜひ覚えてくださいね。
東京都の妖怪・伝説
置行堀(おいてけぼり、おいてきぼり)
置いてけ~と言って魚を取る妖怪
「置行堀(おいてけぼり)」は、釣った魚を「置いてけ~」と言って魚を取ってしまう妖怪です。その正体は河童(かっぱ)やカワウソの化けたものという話や女の姿を見たという話が残されています。
むかし、東京都墨田区(すみだく)には水路が多くあり、魚がよくつれると評判(ひょうばん)の堀がありました。ある男が夕暮れにたくさんつった魚を持ち帰ろうとすると、堀の中から「置いてけ~」という恐ろしい声がしたそうです。家に帰って魚の入ったかごを見ると、たくさん入っていたはずの魚が一匹もいなかったと伝えられています。
髪切り(かみきり)
人の髪を根元から切り落とす妖怪
「髪切り(かみきり)」は、人間の髪の毛をこっそりと切る妖怪です。
江戸(東京都)や伊勢(三重県)で伝えられている妖怪で、夜中に道を歩いている人の髪が切られることがあったそうです。本人はまったく気づかず、切られた髪は道に落ちていたと言われています。
むかし、東京の本郷に住む召し使いが屋敷(やしき)の共同便所に入ろうとしたところ、自分の髪の毛がとつぜんみだれ髪となってしまいました。便所には召し使いの結っていた髪が根元から切り落とされて転がっていたので、髪切りの仕業であろうと恐れ、昼間でもこの便所に入る者はいなくなったということです。
篠崎狐(しのざきぎつね)
幽霊に化けたいたずら好きの狐
「篠崎狐(しのざきぎつね)」は、東京都の篠崎という地で人にいたずらをした化け狐(きつね)のことです。
むかしむかし、ある夏の日の早朝のことです。魚商人の男が道で寝ている4匹の白い狐を見かけました。この男は何度も狐に魚をとられていたので、いたずらの仕返しとばかりに急に大声をたてて驚かしました。狐は飛び起きあわてて逃げていったので、男は満足して立ち去りました。
その日の夕方、雨が降り出したので男は知り合いの家に寄りました。しかし、意外にもその家の女房(にょうぼう)が亡くなり、かんおけを主人が担ぎ出すところでした。日頃から主人と親しくしていた男は留守(るす)を頼まれました。主人の帰りを待っていたところ、突然女房の幽霊(ゆうれい)が出てきて男の腕にかみついてきました。
男は悲鳴をあげて逃げ出し、腕に血を流しながら川の堤を上り下りして逃げまどいました。通りかかった近くの百姓がその様子から狐に化かされていると思い、水をかけると男は正気に戻りました。
男は反省し、小豆飯(あずきめし)に油あげをそえて狐にあやまりにいったそうです。実際には雨は降っていませんでしたが、腕の傷は本物でその後も痛みに苦しんだと伝えられています。
『梅翁随筆』著者未詳より
※妖怪の話はこちらに掲載されている内容と異なるものもあります。
※同じ妖怪・似た話がほかの都道府県にも伝わっている場合があります。
※妖怪のイラストはイメージです。