栃木県にむかしから伝わるご当地妖怪を日本地図とイラストで一覧表にして紹介します。
雷獣(らいじゅう)、殺生石(せっしょうせき)、九尾の狐(きゅうびのきつね)、百目鬼(どうめき)、静か餅(しずかもち)…。あなたの知っている妖怪もいるかもしれません。妖怪といっしょに都道府県の特徴や自慢などを紹介しているので、ぜひ覚えてくださいね。
栃木県の妖怪・伝説
雷獣(らいじゅう)
イナズマとともに空を駆けめぐる妖怪
夏に激しい雷(かみなり)が鳴ることで有名な栃木県。特に初夏から秋口にかけて、夕方になると毎日のように、空が割れるような雷鳴がとどろきます。
雷獣(らいじゅう)は雷とともにやってくる妖怪で、栃木県のほか茨城県や中部地方に多くの伝説が残されています。ネズミに似た姿で体はイタチより大きく、鋭い爪をもち、尻尾は二股に分かれていると伝えられています。
普段は栃木県日光市にある山などに穴を掘ってすんでいますが、かみなり雲がやってくると飛び乗ります。大きな音をとどろかせながら、稲妻(いなずま)となって空をかけめぐると言われています。雷に打たれた木には、雷獣の爪あとが残っているそうです。
玉藻前(たまものまえ)・九尾の狐(きゅうびのきつね)・殺生石(せっしょうせき)
殺生石となった九尾の狐
栃木県那須町(なすちょう)にある温泉付近にある、近づくものの命を奪う殺生石(せっしょうせき)。かつて殺生石の周りには有毒(ゆうどく)な火山性(かざんせい)ガスがふき出していました。
石の正体は九尾の狐(きゅうびのきつね)。中国神話にも登場する九尾の狐は、平安時代に美女・玉藻前(たまものまえ)に化けて鳥羽上皇(とばじょうこう)をたぶらかしていました。
ところが、上皇は体調を崩し、病に伏せるようになります。医師たちには病の原因がわかりませんでしたが、陰陽師(おんみょうじ)により玉藻前が原因だとわかりました。玉藻前は正体を見破られて九尾の狐となり逃げ出し、那須(なす)の地で退治されて石と化しました。
ところが、石は毒を発して近づく生きものの命を奪い続けたそうです。現在、栃木県にある殺生石付近は日光国立公園となり、誰もが気軽に訪れることのできる観光地となっています。
百目鬼(どうめき)
両手に百の目を光らせた3mの大きな鬼
平安時代、藤原秀郷(ふじわらのひでさと)が栃木県宇都宮市大曽を通りかかったときのことです。突然、白髪の老人が現れて「大曽村の北西にある、兎田(うさぎだ)という馬捨て場で待っていてほしい」と告げて消えてしまいました。秀郷が向かったところ、3メートルもの巨体で刃のような毛と百の目を持つ鬼が現れ、死馬に食らいつきました。
秀郷が鬼をめがけて矢を放ったところ、胸に命中しましたが逃げられてしまいました。秀郷は鬼を追いましたが、鬼は明神山(みょうじんやま)の後方で倒れ、体から火炎と毒気を出すので近寄ることができません。
そこで、本願寺(宇都宮市塙田)の智徳(ちとく)という僧がやってきました。法力により鬼の火炎はおさまり、やがて人の形となって百の目も消えました。鬼はその場に葬られ、以来その場所を百目鬼と呼ぶようになったということです。
静か餅、しずか餅(しずかもち)
静か餅(しずかもち)は、栃木県芳賀郡に伝わる不思議な音のことです。夜中に「コツコツコツコツ」と餅をつく様な音が聞こえることがあるそうです。
その音がだんだんと近づいてくるのが聞こえた人は「静か餅をつきこまれた」と言い、運がよくなるといいます。この際には箕*(み)を後ろ手に差し出すと、財産が入ってくると言われています。
また、音が遠ざかるのが聞こえた人は、「静か餅をつきだされた」と言い、運が落ちると伝えられています。
箕*:穀類(こくもつ)をあおってふるい、カラやゴミを取り除く農具
※妖怪の話はこちらに掲載されている内容と異なるものもあります。
※同じ妖怪・似た話がほかの都道府県にも伝わっている場合があります。
※妖怪のイラストはイメージです。