岡山県にむかしから伝わるご当地妖怪を日本地図とイラストで一覧表にして紹介します。
スイトン、ぬうりひょん、ぬらりひょん、すねこすり、牛鬼、阿久良王(あくらおう)…。あなたの知っている妖怪や伝説もあるかもしれません。妖怪といっしょに都道府県の特徴や自慢などを紹介しているので、ぜひ覚えてくださいね。
岡山県に伝わる妖怪・伝説
牛鬼
島になった妖怪で「牛窓」の地名の由来に
牛鬼(うしおに・ぎゅうき)は、岡山県や香川県、島根県など西日本に広く伝わる妖怪です。顔が牛で体がクモ(または顔が牛で体は鬼)の姿の巨大な妖怪で、おもに海岸に現れて浜辺を歩く人間を襲うと言われています。
岡山県の瀬戸内市牛窓町に伝わる牛鬼は、今からおよそ1800年前にさかのぼります。仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)と神功皇后(じんこうこうごう)が牛窓町の沖合を船で通った際、8つの頭を持つ牛の怪物「塵輪鬼(じんりんき)」が一行を襲いかかりました。仲哀天皇は牛鬼を矢で打ち抜き、仕留めました。牛鬼の体はバラバラになって海に散り、のちに牛窓周辺の島になりました。頭が「黄島」、胴が「前島」、尾は「青島」へと姿を変えたと伝えられています。
ところが、天皇が崩御(ほうぎょ)した後も塵輪鬼は成仏せずに悪霊(あくりょう)となり、牛鬼に変化して皇后に襲いかかってきました。そのとき、皇后の守護神である住吉大神(すみのえのおおかみ)が牛鬼の角をつかんで投げ倒し、再び退治したといいます。「牛窓(うしまど)」の地名は、牛鬼が海へ倒れる様を「牛転(うしまろ)び」と表現したことが由来とされています。
スイトン
一本足で飛んできて、人の心を読む妖怪
「スイトン」は、岡山県真庭市の蒜山(ひるぜん)エリアに伝わる妖怪です。面白い姿をしていますが実はおそろしい能力を持っており、人間の心をすべて読むことができます。
悪いことをたくらんでいる人がいたら、どこからともなくスイ~とそばに現れ一本足でトンと立ち、引き裂いて食べてしまいます。そのため、蒜山高原には昔から悪い人がいないと伝えられています。
参考文献:八束村『八束村史』
阿久良王(あくらおう)
由加山で暴れた鬼が神使の白ギツネに
阿久良王(あくらおう)は、岡山県倉敷市児島にある由加山を根城にし、悪さばかりしていたと伝わる鬼の大将です。
桓武天皇の御代(781~806)、阿久良王は家来を従えて里に下りては人を食ったり物をうばったりして人々を困らせていました。そこで、天皇は坂上田村麻呂将軍に鬼退治を命じました。鬼たちはとても強く、苦しい戦いになりました。しかし、将軍は鬼が酒に酔いつぶれたときを見計らい、ついに鬼を退治しました。
阿久良王は死の間際、これまでの悪事を悔やんで改心しました。阿久良王の体は金色に光って飛び散り、75 匹の白ギツネとなりました。白ギツネは由加大権現(ゆがだいごんげん)の使いとして人々を助けたと伝えられています。
ぬうりひょん
勝手に家に上がり込み茶を飲む妖怪
岡山県の吉備中央町には「ぬうりひょん」という妖怪がいたと伝えられています。海坊主(うみぼうず)のようなハゲ頭はツヤツヤと光り、眼や鼻はあるのかないのかわからないくらいに小さい、おじいさんの姿です。袈裟(けさ)を着ていますが僧侶ではなく、年末のいそがしいときをねらって勝手に家に上がり込み、茶をわかして飲むそうです。
ぬうりひょんの正体はクラゲで、家から追い出そうとしても体がクニャクニャとして手ごたえがありません。「茶の相手をすると豊作になる、逆に冷たくあしらうと悪さをする」と伝えられています。
ぬらりひょん
海に浮き沈みして人をからかう妖怪
「ぬうりひょん」と名前や姿が似た妖怪、「ぬらりひょん」。瀬戸内海にはぬらりひょんの伝説が残されています。ぬらりひょんは人の頭くらいの大きさでボールのように丸い形の妖怪です。海にプカプカと浮かんでおり、船を寄せてさわろうとすると「ヌラリ」と手をすり抜けて沈み、また「ヒョン」と浮いて人をからかうと伝えられています。
すねこすり
足にまとわりついて歩く邪魔をする妖怪
岡山県の井原市に伝わる、人の足にまとわりつく妖怪「すねこすり」。雨の降る夜、とくに何もないところで転びそうになると、それはすねこすりのしわざだと言われています。
すねこすりは犬のようなかわいい姿をしており、足の間をこすりながら通り抜けて歩くじゃまをします。不思議に思って足元を見ても何もいません。気のせいだと思いまた歩き出すと、やはり何かが足元にまとわりついて転びそうになります。恐ろしくなって夜の道を逃げ出すことになるといいます。しかし、転ばせる以外のいたずらはしないので、案外かわいい妖怪なのかもしれません。