福島県にむかしから伝わるご当地妖怪を日本地図とイラストで一覧表にして紹介します。
朱の盆(しゅのぼん)、亀姫(かめひめ)、足長手長(あしながてなが)、瀬坊主(せぼうず)…。あなたの知っている妖怪もいるかもしれません。妖怪といっしょに都道府県の特徴や自慢などを紹介しているので、ぜひ覚えてくださいね。
福島県の妖怪・伝説
朱の盆(盤)(しゅのぼん・しゅのばん)
顔が真っ赤で鬼のよう、人を驚かす妖怪
「朱の盆(盤)(しゅのぼん・しゅのばん)」は、恐ろしい顔を見せて人を驚かせる妖怪です。顔は真っ赤で口は耳までさけ、額(ひたい)に1本の角があると言われています。
むかし、会津(あいず)の諏訪(すわ)の宮に、朱の盆(しゅのぼん)という妖怪がいるといううわさがありました。ある晩、若い侍(さむらい)が諏訪の宮の近くを恐る恐る歩いていました。すると、偶然侍が通りかかったので急いでそばにより、二人で歩き始めました。若侍が「この辺りに朱の盆という妖怪が出るのを知っていますか」と問いかけると、「それはこんなものでしょう」と言って振り向き、恐ろしい妖怪 朱の盆に姿を変えました。顔は真っ赤で目は皿のように大きく光り、口は耳までさけ、髪の毛は針のようで、額(ひたい)に1本の角が生えていました。
若侍は驚きのあまり気を失ってしまいました。しばらくすると正気に戻ったので急いで家に帰り、女房にさきほどの出来事を話しました。すると、女房は「恐ろしいものに出会いましたね。それはこんなものでしたか」と言いました。顔を見るとまた朱の盆が目の前にいました。侍は再び気を失い、今度は本当に死んでしまったといいます。
三坂春編『老媼茶話』より
亀姫(かめひめ)
「亀姫(かめひめ)」は、福島県の猪苗代湖(いなわしろこ)の近くにある、猪苗代城(いなわしろじょう)に住みつき、城主の寿命(じゅみょう)を予言すると言われた妖怪です。※現在、城はありません。
亀姫は、兵庫県の姫路城(ひめじじょう)に住んでいたとされる妖怪・長壁姫(おさかべひめ)の妹という説もあります。
足長手長(あしながてなが)
手が伸び足が伸びる、夫婦の妖怪
「足長手長(あしながてなが)」は足長と手長と夫婦の妖怪で、足長が手長を肩に背負っています。夫の足長はどんなに遠くても足を伸ばせば届き、妻の手長はどんな遠いところの物でもヒョイとつかむことができると言われています。足長手長は九州地方にも出現する妖怪ですが、福島県にも伝承が残されています。
むかし、福島県の磐梯山(ばんだいさん)に足長手長が住んでいました。足長手長は里に降りてきては悪さを繰り返します。夫の足長は会津盆地(あいずぼんち)をひとまたぎして空を真っ暗にし、妻の手長は磐梯山の頂上に座り猪苗代湖(いなわしろこ)から水をすくっては大粒の雨を降らせます。あたり一帯、暗い雨の日が続き、村人は食べるものがなくなり大変困っていました。
ある日、ボロボロの衣をまとった弘法大師(こうぼうだいし)というお坊さんが、村にやって来ました。荒れ果てた村の様子に驚いた弘法大師は、足長手長を退治するために磐梯山の頂上に登りました。そして、大きな声で足長手長に呼びかけ、「お前たちにできないことがないのなら、このつぼに入ってみよ!」と小さなつぼを出しました。すると足長と手長は「そんなのは簡単だ」と言いながら2人して小さくなり、つぼの中に入りました。お坊さんはすかさずつぼのフタをぎゅっと締め、衣のすそでぎりぎりっと丸めました。つぼの中で足長と手長が大暴れしましたが、フタは二度と開きませんでした。
つぼは磐梯山の頂上に埋められました。村人は足長手長を退治した弘法大師をたたえ、頂上に磐梯明神を建てたといいます。
瀬坊主(せぼうず)
「瀬坊主(せぼうず)」は阿武隈川(あぶくまがわ)に伝わる妖怪です。男の姿で川の流れにたたずんでいるのは「瀬坊主(せぼうず)」、女の姿をしたものは「瀬女(せおんな/せな)」と呼ばれます。夜、川漁をする人が目撃したと伝えられています。
川の精霊や幽霊、またはカワウソが化けたものとの説がありますが、くわしくはわかっていません。
※妖怪の話はこちらに掲載されている内容と異なるものもあります。
※同じ妖怪・似た話がほかの都道府県にも伝わっている場合があります。
※妖怪のイラストはイメージです。