秋田県にむかしから伝わるご当地妖怪を日本地図とイラストで一覧表にして紹介します。
5ひきの鬼、八郎太郎(はちろうたろう)、灰坊主(あくぼうず)…。あなたの知っている妖怪もいるかもしれません。妖怪といっしょに都道府県の特徴や自慢などを紹介しているので、ぜひ覚えてくださいね。
秋田県の妖怪・伝説
八郎太郎(はちろうたろう)伝説
龍となり、安住の地を求めた若者
「八郎太郎(はちろうたろう)」は、秋田県にある湖・八郎潟(はちろうがた)の龍神です。
むかし、秋田県鹿角市(かづのし)に八郎太郎という17歳の男がいました。ある日仲間の掟(おきて)を破り、仲間の分のイワナまで自分一人で食べてしまいました。するとひどくのどがかわき始め、川の水を飲みました。それでも喉は渇くばかりで、ついには川の流れに顔をつけて日の暮れるまでずっと飲み続けました。ふと顔を上げたとき、水面に映った自分の姿は火の玉のような真っ赤な目をした龍になっていました。
山から戻ってきた仲間たちは驚き、八郎太郎を小屋へ連れて帰ろうとしました。しかし化け物になってしまった八郎太郎は、沢から流れる川をせき止めて十和田湖(とわだこ)を築き、湖の底に住む主となりました。
その後、南祖坊(なんそぼう)というお坊さんが十和田湖にやってきました。「神様のお告げで十和田湖の主になることになった」と言います。八郎太郎と龍に化けた南祖坊の激しい戦いは七日七晩続きましたが、ついに八郎太郎は打ち負かされて逃げだしました。静けさを取り戻した十和田湖に龍の南祖坊は沈み、深い湖の底に住む主となりました。
南祖坊との戦いに敗れた八郎太郎は、生まれ故郷の鹿角に帰って来ました。しかし、鹿角に住んでした神様たちは、「八郎太郎が鹿角を湖にすると自分たちの住む場所がなくなる」と心配し、石ころを投げて八郎太郎と争いました。
この争いの後、八郎太郎は鹿角から逃げ出し、今度は八郎潟(はちろうがた)の主になったといいます。八郎潟は八郎太郎が作った湖だと伝えられています。
灰坊主(あくぼうず)/灰ばんば(あぐばんば)
囲炉裏の灰の穴に住む妖怪
「灰坊主(あくぼうず)/灰ばんば(あぐばんば)」は、囲炉裏(いろり)の灰(はい)の中に住み、灰に穴を掘って遊んでいると穴の中から現れる怪物(かいぶつ)です。
むかし秋田県のある村に、あくぼうずがいました。目がなくて鼻と口だけがある妖怪です。しかも口は頭のてっぺんにあり、上の方を向いています。毎年、村の若い娘をあくぼうずの家にさらって食ってしまうので村人から恐れられていました。
ある日、その村にいた18歳になる娘がとうとうあくぼうずに見つけられてしまいました。両親は娘を囲炉裏から遠ざけて守ろうとしましたが、娘は「自分が退治しにいくので、一枚石と餅(もち)を用意してほしい」と言いました。
それから間もなく、娘はあくぼうずの家に連れていかれました。あくぼうずが「風呂をたけ」を言うので、娘は風呂をたきました。さらに「囲炉裏に火をたけ」と言うので、娘はそっと一枚石を灰の中に隠しました。今度は「餅を焼け」と言うので、どうぞと言って餅を差し出すふりをして熱々の一枚石をあくぼうずの口の中にどすーんと入れました。
すると、あくぼうずは熱いと言って風呂の方に行き、さらに熱々の湯を頭からかぶったので「熱い熱い」と叫びながら死んでしまったと伝えられています。
鬼(おに)
ナマハゲの始まりとなった5匹の鬼
秋田県の男鹿半島(おがはんとう)にある男鹿市(おがし)には赤神神社 五社堂(あかがみじんじゃ ごしゃどう)があり、5匹の鬼の伝説が残されています。
むかし、漢の武帝(ぶてい)に連れてこられた5匹の鬼がいました。武帝は鬼たちを家来として使いましたが、鬼は村の作物や家畜を奪って大暴れし、娘までさらっていくようになりました。
鬼の悪さに困った村人たちは、「一夜で千段の石段を築くことができれば1年に1人ずつ娘を差しだす。しかし、できなければ二度と里に降りて来ないでくれ」というカケを鬼としました。
鬼たちの働きは思いのほか早く、どんどん石段を積み上げました。あと一段のところで、村人が天邪鬼(あまのじゃく)という妖怪に「コケコッコー」とニワトリの鳴きまねをさせました。鬼たちは朝が来たと思い、あきらめて山奥へ逃げ去ったといわれています。
※秋田県にある赤神神社五社堂は、鬼が築き上げたという999段の石段を登ると見えてきます。まつられているのは5匹のなまはげだといいます。
※妖怪の話はこちらに掲載されている内容と異なるものもあります。
※同じ妖怪・似た話がほかの都道府県にも伝わっている場合があります。
※妖怪のイラストはイメージです。